センター長挨拶

九州大学五感応用デバイス研究開発センター
               志堂寺 和則

 九州大学五感応用デバイス研究開発センターは、人間の五感を対象とする世界初の学際的研究拠点です。2013年に味覚・嗅覚センサ研究開発センターとして発足し、2018年に研究領域を拡充して五感応用デバイス研究開発センターへ改組しました。さらに2020年にはセンター名称を維持したまま組織体制を刷新し、部門の新設と再編成を同時に実施することで、現在の四部門体制を構築しています。

 ヒトの五感は究極のセンサシステムといわれますが、その仕組みを人工的に再現・融合することは大いなる挑戦です。本センターは、九州大学が世界をリードする味覚・嗅覚研究を基盤に、視聴覚や脳知覚科学を統合し、次世代の五感融合デバイス創出を目指しています。このため、構成メンバーは6研究院・7学府・基幹教育院、九州大学病院に所属し、心理学、分子生物学、生理学、電子工学、食品機能科学、情報科学など幅広い分野をカバーする研究者達となっています。こうした多彩な専門性に加え、大学の全面的支援と企業との協力を得ることで、基礎から応用に至るまで一貫した研究推進体制を整えています。

 本センターの使命は、五感を末梢から中枢まで一体的に捉えるサルヴィタスデバイス(Salvitas Device)を開発し、健康長寿社会と安心・安全な生活基盤の実現に寄与することです。研究は、味覚・嗅覚センサ部門(食譜やフードログデバイス、匂い環境計測)、感覚生理・医療応用センシング部門(嗅診、認知症予防、感覚代行)、視聴覚部門(感覚錯覚、VR応用、生体認証)、五感融合ホイール部門(感覚シグナル数値化、健康計測、認知症診断支援)で展開されています。

 本センターは、五感研究の学術的基盤を強化すると同時に、医療・福祉、食品産業、エンターテインメントなど多様な分野での社会実装を視野に入れています。さらに、国内外の研究機関や企業との連携を通じて新しい学問領域を開拓し、次世代の研究者育成にも積極的に取り組んでいます。これらの活動により、研究成果を実社会へと還元し、新たな価値を創出してまいります。

 今後とも皆様のご理解とご支援のほど、よろしくお願い申し上げます。